2024年1月1日に発生した能登半島地震の現地調査報告第二報です。2024年3月27日に石川県珠洲市の現地調査に行ってきました。現地の状況をお伝えいたします。

2024年3月27日 石川県珠洲市現地調査

能登半島地震で震源に最も近い能登半島の最先端、石川県珠洲市に行ってきました。
 1月1日16時10分に発生した能登半島地震の本震では、珠洲市北部が震源でしたが、珠洲市の被害は、震源から離れた珠洲市南部で多く発生しています。J-SHISマップによる「表層地盤増幅率」を確認すると、珠洲市南部の表層地盤増幅率が高くなっています。表層地盤増幅率は地震力の増幅具合を示す指標で、軟弱地盤では地震力が増幅するイメージです。このことから、珠洲市南部は地盤が軟弱であるが故に地震被害が多く発生したと思われます。

 珠洲市は、能登半島の最先端にあり金沢駅から車で約4時間かかりました。珠洲市の現地調査では、正院町で建物の倒壊被害、飯田町で津波被害、宝立町で津波被害、建物倒壊被害、若山町で活断層の確認を行いました。珠洲市の現地調査の印象としては、これまで調査した輪島市に比べ建物の倒壊被害が多いように感じました。加え、倒壊の具合も酷く2階まで崩れ落ちている木造住宅が多く見られました。

珠洲市正院町

正院町は、建物倒壊被害が見られました。

珠洲市飯田町

飯田町は、海岸沿いで津波被害が見られました。

海岸沿いでの津波被害は、地震発生から3ヵ月経った3月末時点でも手付かずのままです。海岸沿いは商業施設が多くあり、津波で流され折り重なる車、ショッピングセンターの壁に車が突き刺さり、いくつもの店舗が津波被害を受け、商品が散乱している状況でした。


 飯田町から宝立町に向かう県道沿いでも多くの建物が倒壊していました。正院町の建物倒壊と同様に、古い木造住宅が多く倒壊していました。

珠洲市宝立町

宝立町は、海岸沿いで津波被害、内陸部で建物倒壊被害が見られました。海岸沿いの津波被害は飯田町よりも被害が大きく見えました。建物残骸が散らばっていました。

珠洲市若山町

若山町は珠洲市のかなり内陸部にあります。若山町の田んぼには、高さ1.8mの断層のずれが見られました。断層のずれは、地盤の隆起と違い、段差の高い方と低い方とで、今までと同様の景色が広がっています。現地で直に見ると何とも不思議な光景です。

珠洲市は、2023年5月に震度6強の地震に襲われています。その地震で倒壊を免れた建物も耐震性能にはダメージが蓄積されており、今年の地震でとどめを刺されるように多くの建物が倒壊したと考えられます。現在の建築基準法で木造住宅に求められている耐震性能(耐震等級1)の要求性能は、震度5強程度の地震では「損傷せず(住み続ける性能を維持)」、震度6強から7程度の地震では「(一度だけ)倒壊・崩壊しない(命を守るが住み続けることはできない)」です。したがって、震度6強の地震を経験している場合、耐震性能は損傷している(当初の耐震性能が保持されていない)状況なのです。建物が損傷により傾いたり、目に見える被害があれば耐震補強等行う可能性もありましが、建物は傾くことなく建ち続け、目に見える被害がなければ見えない部分で損傷し耐震性能が低下しているとは想像できないと思われます。さらに、旧耐震の建物であれば、要求性能はさらに低く、損傷具合も大きくなります。このことから、震度5強を超える地震が発生した場合には建物には何らかの被害が出ているものと想定し、是非とも耐震補強をして欲しいものです。

Googleマップで地震被害を確認できる

Googleマップのストリートビューで、珠洲市正院町、飯田町、宝立町の地震後の状況が確認できます。ストリートビューでは、撮影した日付を変更できる機能が付いており、日付変更部分を見ると2024年1月、2月の珠洲市の状況を見ることができます。地震前と地震後の比較もできるため、どのような建物がどう倒壊しているのかを詳しく確認することができます。ぜひとも、確認してみてください。

■筆者 プロフィール
株式会社M’s(エムズ)構造設計
代表取締役社長 佐藤 実
一級建築士、構造設計一級建築士、農学修士(木質構造建築物基礎構法)、性能評価員ほか「構造塾」の運営(構造計算研修、相談窓口など)
構造塾には、木造住宅の構造計算や最新情報を学ぼうと全国の工務店・設計事務所、プレカット工場などが集まっている。またネットで「構造塾チャンネル」も好評。

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