30年前からユニット基礎鉄筋に取り組んできた篠澤社長。先代が始めたじゃかご製造から今では住宅基礎が売上の7割を占める。公共工事も住宅市場も縮小予想の中、現場組み立てサービスを武器に顧客の支持を得てきた。今年B評定を取得、今後A評定取得目指している。
JHR会員うちの会社インタビュー 語る人
長野大信工業株式会社・代表取締役 篠澤政仁 氏
「JHR会員うちの会社インタビュー」とは コロナ禍で生活や社会の姿が大きく変わってきましたが、日本住宅基礎鉄筋工業会の会員企業も新しい時代に向けて一生懸命活動しています。こうした会員企業の現状や今後の目標などについて、“うちの会社”を代表者に語っていただきます。
御社はじゃかごの製造からスタートしたとのことですが会社の成り立ちなどは?
篠澤 先代社長の父が最初じゃかごの会社にいて、そこがつぶれて土木資材販売の会社に入り、じゃかご、ガードレール、グレーチングなんかを売っていました。そこで資金をためて独立し、じゃかご製造の会社を作ったわけです。創業35年になります。長野は土木県でしたので需要は多かったですね。じゃかごの会社は長野県に5社ありましたが、今はうち1社しかありません。当時はそれだけ需要があったのですね。
私が会社を引き継いだのは6年前ですが、入社したのは創業から5年目くらいだったですね。私自身は、東京で洋服の販売をやってました。将来を考えたら定職についた方がいいかなあと思いまして、戻ってきて父の会社に入ったんです。
住宅用の基礎鉄筋に取り組んだのもその当時で早かったと思います。この会社に入っても最初はやる事がなかったので、自分でスーパーベースを始めたんです。先代からスーパーベースやったらどうかというアドバイスもありました。
仕事が、やわらかいモノから硬いモノへ180度仕事が変わったと思いますが。
篠澤 父がやっていた商売なので違和感なく始められました。ただ何も知らなかったので、全部見様見真似でやってきました。大変でしたね。仕事先は最初は土木関係が多かった。橋梁とかでかい構造物が多かったですね。
でも、そのうち長野オリンピックが終わったら不景気になるだろうと先代が言っていたのです。それで、じゃあ住宅の基礎鉄筋やろうということで精力的に営業を始めてやってきました。おかげで北信市場で展開できるようになりました。じゃかごからスタートして基礎鉄筋の加工メーカーという形を続けてきましたが、今では住宅が7割、土木が3割くらいになっています。徐々に住宅の比率が大きくなってきました。
住宅ユニット鉄筋は、現場で組み立てまでやっているということですが、北信市場の状況は。
篠澤 今年はちょっと少ないですね。去年までは順調でした。お客は地元の工務店がほとんどです。基礎屋さんでメインとしているところは20社くらいで、1年に1、2回のところも含めると40社くらいあります。ですので基礎鉄筋の生産については、現場が2班でしかできないので、それで毎月いっぱいいっぱいの状態です。
現場の組み立てをすることのメリットは大きいですね。やっぱり製品、加工だけですと値段勝負になってしまう。でも、ちゃんと納期というか工期を守って現場をやるとお客さんは逃げません。まあ単価が多少高くても受け入れられますね。
長野県は必ず峠を越えないと他地域の現場につけないので、北信だけだったらいいのですけど他に行くと配送コストがかかってしまうのです。地域が限定されている市場で、お客さんの顔も見えるし工務店さんとも仲良くしていますからね。
また、今年はおかげさまでB評定を取りました。今後はA評定を取る計画です。住宅メーカーさんはA評定の業者を優先しますからね。最近はこうした評定については地元の業者さんも工務店さんも気にしだしていますので十分効果はあると思っています。
現場組み立てまでしているので、現場ごとの対応が大変だと思いますが。
篠澤 工務店から基礎伏せ図が来るので、それを見てこちらの方で割付作業をして鉄筋を製造するだけですから、問題はないと思います。ただ作るものは工務店さんによって全部違う。だから要求に全部合わせる様にしています。うちの会社もここはこういう仕様の方がいいなどと余りうるさいことは言わないで、もう何でもやりますよということです。また、加工したものは自分たちで現場で組み立てるので、組み立てやすいようには考えてアレンジしています。
基礎鉄筋を加工するだけのところは、基礎伏せが来て自分たちで割り付けをして、それを基礎屋さんに渡すんです。基礎屋さんは自分のやり方があるので、こんな複雑なものをどうやって納めるのだとか言ってくる人もたまにいます。その辺、うちは自分の会社で現場で組み立てている強みがありますね。現場でのクレームは殆どないです。
工場側のミスで現場がストップすることがないというのは御社の大きな強みですね。
篠澤 逆のこともありますよ。足りないやつを作ってくれないかという要求もあります。
うちのお客さんで、住宅メーカーさんの仕事もやっている所なんかでは、支給材でやっているのだけれど、「ちょっといいかなって」頼まれるので作っていますね。また予備材を持って行ってやることもありますね。ただ拾い出しと工場の加工は大変です。毎回毎回違うので工場も1件、1件でしか対応できないですからね。
また、工場的には規格を統一できればということはあるのですが、厳密にそうした規格は求められていないし、逆に「うちは鉄筋をたくさん使っている」とか言うところもある。なんか過剰設計です。こうしたことに対しては、工業会などでモデルを作っていただいて推奨してもらうのが一番いいと思います。実際に受注する物件は、標準的なものとそんなに変わらないと思いますが、実際にはメーカーさんによっても全然違いますからね。
こだわりユーザーはそんなにいないのですが、本当にうるさい設計士さんはいます。基本的に溶接がダメという人で、評定をとってもダメということですね。そういう人は一年に1、2件くらいあります。世界的な有名人の別荘が軽井沢にあるのですが、そこで小屋の基礎をやったのです。5メーター角の基礎ですが、溶接ダメという設計士さんでやりました。
長野の住宅市場についてはどう見ていますか。職人不足や住宅需要の先細りが心配されますが、御社の今後などについては如何ですか。
篠澤 B評定が取れましたし、これからA評定も取れれば仕事は増えていくと思います。工場は常勤で2人、現場が5人です。会社全体では事務も入れて10名です。配達している社員の運転手も鉄筋屋で働いていた人を使っているので、人が足りない時は現場に入ってもらう事にしています。
社員のうち2名がベトナム人で、来て3年です。外国人研修生は10年くらい前から使っています。
市場的には顧客の基礎屋さんも高齢化しているのでユニットのニーズはまだまだ増えると思います。また若い基礎屋さんも結構出てきています。ただ基礎は地味ですし汚れるし重いし、人気がもう一つですね。うちも若い人を入れたいのですが、その辺ができていません。社員は弟や従弟などの身内が多いので辞めなくていいのですが、高齢化したとき本当にどうするんだろう、と考えますね。
今後の市場状況ですが、長野は人口が少なくなっていますが、住宅を見ると戸建てが多く集合住宅が少ないので、需要は急激には減らないと思います。これまでも、都会の方では減っているねと言っている時でも逆にこの地域は需要が増えている感じだったですからね。
最後ですが、工業会についてご意見があれりばお願いします。
篠澤 基本的に色々PRしていただいているので助かっています。
工業会に入ったきっかけは、評定を取ろうと思って入会したのです。田島さんがいたころで10年くらい前ですね。その時は先代が頑張っていた時でまだ評定なんかは早いということでやってきたのですが、今年ようやく取った次第です。私はあまり工業会の方に出席していなかったのですが、全国の方が集まってやっているので、そういう方々がいい関係を築かれている。私がたまに出席しても良い会だと思いますね。そういう全国的な力を活かしていろいろ活動していただけたらいいと思います。
ところで、社長室にある焼き物や掛け軸はご趣味ですか。
篠澤 先代がやっていたもので、小遣いで買っていたもばかりだそうで余り値打ちはないように聞いています。私の趣味はロックが好きなのでライブを見に行ったり、バンドもたまにやっています。地元でイベントあるときとか活動しています。担当はボーカルです。子供は娘が2人で2人とも嫁いだので後継者がいないですね。それが一番の心配です。
でもこの業界がどこまで行くかもわかりませんからね。二次製品化する感じがするのですよ。コンクリートの会社が製品を作ってプレキャストみたいな感じになるかもしれません。関東では増えていますね。
■会社プロフィール
本社・工場:長野市大字大豆島字樋掛3980
工場:須坂市塩野9385
年 商:3.5億円
従業員:10名。