地元古川でも宮城県内でも大きなシェアを持つ住宅基礎鉄筋メーカーの創電社。M&Aにより大手商社・阪和興業㈱のグループ会社となった。阪和興業から出向した小林社長は、長年の付合いがあった同社のため今後の市場を見据えて人員や工場生産体制の刷新に取組んでいる。

JHR会員うちの会社インタビュー 語る人
有限会社創電社・代表取締役社長 小林広一 氏

小林社長 
浅草生まれで埼玉育ち。家を建てたときから単身赴任の連続、仙台には8年の勤務経験あり。趣味はスポーツ(見る方)。コロナが明けてからは市内の飲食店の開拓に注力。ラーメンは52 軒を踏破。56歳。
JHR会員うちの会社インタビュー」とは 
コロナ禍で生活や社会の姿が大きく変わってきましたが、日本住宅基礎鉄筋工業会の会員企業も新しい時代に向けて一生懸命活動しています。こうした会員企業の現状や今後の目標などについて、“うちの会社”を代表者に語っていただきます。

創電社に来られたのはいつですか。

小林 創電社は1980年創業でその名前の通り、もともと送電線の基礎を作る仕事でした。その後鉄筋加工に特化した会社となり工場が手狭になったので、現在地の大崎市古川に土地工場を取得して機械を増やし評定も取得して発展してきました。
 そして2018年に材料で取引があった阪和興業が譲り受けました。2021年の1月末まで伊勢さんが社長に留まり2月から私が社長になりました。私が阪和興業からこちらに出向してきたのは、その4ヶ月前の10月でしたから、訳の分からないうちに社長になったという状況でした。

こうした工場に来るのは初めてでしたか。

小林 基礎鉄筋は初めてでした。千葉に阪和興業のグループ会社でトーハンスチールという鉄筋加工会社に1年半いたことがあります。その時は大手ゼネコンが相手で鉄筋に熱を加えるのがタブーみたいな感じもありましたから、溶接工法は当時あまり理解していなかった。こちらの会社に来て初めて、こういう世界があるんだというのが分かった感じです。
 大変だったのは、私が来て間もなく工場長が辞めたのですが、そんな時にBRSの評定更新があったことです。あとは社員がなかなか定着しなかった。年間休日は88日しかなかったので、休日を増やしたり待遇をあげたりしました。今年は年間休日を109日としました。働き方改革でいろいろい法律が増えているので、労働環境が良くないと応募も来ないですし、すぐ辞めていってしまう。そういった意味ではコストは多少かかりますが今は余裕ある人数の確保にはなってます。

実際にやってみて基礎鉄筋の市場やこちらの会社をどう思われましたか。

小林 特長は、北は青森から南は福島のいわきや会津若松までの配達エリアの広さです。当社の製品のシェアをみると、東北全体で13%ぐらい、宮城県内では35%、地元の大崎市で50%くらいあると思っています。平均すると月間400棟、600トン位ですね。その辺が定位置で目標ですね。そういった意味では住宅は結構建ってるんだっていうのが正直な感想でした。
 売上は今年の3月決算では9億7600万円です。傾向としては1棟あたりの重量が一時減りましたが、また増えてきています。建物の規模が小さくなってきて戸建ても減ったのですが、基礎屋さんが結構アパートをやるようになった。規模が大きなものでは4~5トンになりますから、そういうのが影響しているのかと思います。
 うちの顧客層は、全国展開している住宅メーカーさんや東北の地場の工務店さん、あとは基礎屋さんです。客数で言ったら7割が基礎屋さん向けです。売上ベースでは7割方が全国規模のハウスメーカー、1割ぐらいが地元の工務店、2割が基礎屋さんという感じです。

全国的に人手不足続く状況ですが、こちらの工場はどんな状況ですか。また24年問題もありデリバリーも大変だと思うんですが。

小林 今社員は43人います。事務12人、配送・運転手5人で、工場は25人いてそのうち10人がベトナム人実習生です。事務のうち9人が営業部積算課です。そのうち部長を含め3人が男性です。
 デリバリーでは、配車係が1人、ドライバーが4人いて専属の外注が2台、合計6台という体制です。ここから仙台だったら1日2往復できるので22日稼働で1日当たり20棟弱運べるので月間400棟位ですね。都内みたいに狭くて車が入らないところは少ないので2棟分積んで行けるし帰ってきてもう一回行くという感じです。
 生産体制では、今は人数がこれだけいるので、ここ1年ほどほぼ残業なしで定時で仕事を上がっています。そういう意味では、工場の稼働は低位安定って感じですかね。そのため今後は老朽化してきた設備を順に入れ替えていく作業をしたい。省力化出来る機械に入れ替えていくのが課題ですが、そうなるとこの敷地と建屋では対応できないと思いますので、近い将来工場の建替えを含めて設備計画をする時期に来ています。

創電社の工場

最近は基礎鉄筋も運ぶだけでなく現場取付けの要望もあると聞きますが、こちらではどうしていますか。

小林 うちは取付けを一切やっていないのですが、そういった要望は確かにあります。基礎屋さんもハウスメーカーさんも「取り付けやんないのっ」とか「基礎屋さんを紹介して」とか言われますね。ただ基礎屋さんの仕事と溶接基礎鉄筋を作る仕事とはニーズが違うのです。今年取り組んでみようかと考えているのですが、その辺をちゃんとマーケティングしないといけないと思います。現場での組立てという新しい機能をつけることによって、工場の生産性が上がるのであればチャレンジするのもありかなと思っています。

拾い出し、積算業務の方はどんな風にしているのですか。

小林 うちは住宅メーカーの客先も沢山あって、全部形状が違い図面も違う。拾い出し・積算のソフトは一応うちにも入ってますけども、各ハウスメーカーごと全部対応するとなると、人間にやらせた方が速いこともあります。また手書きで割付図を作ると、基礎屋さんが見た時に見やすいように工夫して描ける。基礎屋さんはそれを見て「これはここに組むんだ」と分かるし、ちょっと複雑なところは注意書きしてあげることができるんです。こういうことはソフトじゃなかなかできません。たまに話を聞くと「やっぱり創電社さんの割付け図が見やすい」と言ってくる基礎屋さんもいます。やっぱりうちでは「人でやるぞ」みたいなところもありますね。
 同じメーカーでも基礎屋さんによって拾い方が違うこともあるのです。基礎屋さんも自分はこう組み立てるから支筋はこうしてくれ、アンカーはこうしてくれとか色々と要望があります。だから一番困るのは途中で基礎屋さんが変更になることですね。うちは手で拾って加工指示書に打込んでいるので、基礎屋さんが替わると加工指示書を全部作り直さなきゃいけない。また最近はお客さんの求める形状も増えてます。太陽光発電を載せる建物が多くなって荷重が増えているし、地震対応等で頑丈さをアピールしたいっていうのもあるし、様々なニーズが年々増えていますね。

コンパクトな創電社の工場内

住宅建築を取り巻く環境はますます厳しくなっていきますが、こちらの工場の課題、対策はどんなことでしょうか。

小林 うちの会社で作っているのはユニット鉄筋で現場で1本ずつ組みあげる必要がない省略化工法の製品ですが、その工場がちっとも省力化されていないのではシャレにもなりませんので、さらに省力化・合理化を勉強しようと、工業会の皆さんお願いして全国のいくつかの工場を見学させて頂いて来ました。工業会の方々といろいろ情報交換がしたいと思い、去年の8月に東日本地区の小委員会を当社で開催し工場を見てもらいました。
 皆さんの感想は、やっぱり人数が多いと言うことでしたが、トラックの架装では皆さんから「このやり方はいい」と言って頂きました。工場の溶接機は4台で、材料が入って加工機を通り加工が終わったら台車で出します。切断機で切った鉄筋は人力で担いで各溶接機に運びます。出来上がった製品は全部フォークリフトで荷積み場に持っていきます。荷積み場は8か所あって、置いておけば運転手が勝手にユニックで自分の車に積むという段取りです。こういう狭い敷地での品物のローテーションなので、明後日や一週間後に出荷する製品を作り溜めすることが出来ません。今日積み込むものを今日作って運転手が積んでいくみたいな形です。せいぜい半日前倒しで作るぐらいが精一杯でです。作り置きができないというのが一つ弱点ですね。コントロールは大変ですが、今うまくいっているのは人数が沢山いるから出来ているのだと思います。

工業会に対しては、会員の工場見学のほか何かこんなこともあったらいいなということがありますか。

小林 建築基準法の改正の勉強会はあったけど、基準法が変わったらこうした方がいいですよとか、お客さんに説明するノウハウ、販売につながるものがほしい。建築基準法の改正によって我々もビジネスチャンスになるという講習会があるのであればありがたいと思います。

ありがとうございます。

■会社プロフィール
本社・工場:宮城県大崎市古川上埣字阿弥陀18-1
年 商:9億円7600万円(2023年度)
従業員:43名